◆第73回(パーパスは掲げるな ― “使える”状態にせよ)

1. はじめに

ここ数年、多くの企業で「パーパス」が語られるようになりました。

  • 私たちは何のために存在するのか
  • 社会にどんな価値を提供するのか
  • どんな未来を目指すのか

経営トップが語り、美しい言葉がポスターやWebサイトに掲げられます。

しかし、その一方で、現場からはこんな声も聞こえてきます。

  • 「正直、よく分からない」
  • 「いいことは言っていると思う」
  • 「でも、日々の仕事とどう関係するのか分からない」

なぜでしょうか。

パーパスはあるのに、組織は変わらない

今回は、その理由と向き合ってみたいと思います。

2. なぜパーパスは形骸化するのか

パーパスが機能しない組織には、共通した特徴があります。

  • 掲げた瞬間がピーク
  • 日常の意思決定に使われない
  • 評価や会話と結びついていない

つまり、パーパスが「飾り」になっている 状態です。

多くの企業は、「どう作るか」には時間をかけますが、「どう使うか」については、ほとんど設計していません

3. パーパスは「判断基準」である

本来、パーパスの役割は明確です。迷ったときに、判断を助けること

  • この案件はやるべきか
  • この優先順位は正しいか
  • このやり方は、自分たちらしいか

こうした場面で、「パーパスに照らすと、どうか?」という問いが自然に出てくる状態。

それが、パーパスが“使われている”状態です。

4. 掲げるだけでは、人は動かない

ここで、第2回・第3回の話とつながります。

  • 人はロジックだけでは動かない
  • 管理しすぎると学習が死ぬ

パーパスも同じです。

  • どれだけ正しい言葉でも、
  • どれだけ立派な理念でも、

日々の行動と接続しなければ、意味を持たない

むしろ、「立派なことを言っているのに、現実は違う」という違和感が、シニシズムを生みます。

5. 「使えるパーパス」とは何か

では、使えるパーパスとは何でしょうか。

ポイントは3つあります。

① 判断の場面で“使われている”か

  • 会議で参照されているか
  • 優先順位の議論で出てくるか
  • トレードオフの判断に使われているか

⇒パーパスは、迷いが生じる場面でこそ、価値を発揮します。

② 日常の言葉に翻訳されているか

パーパスは、抽象度の高い言葉で表現されがちです。

だからこそ、

  • 現場の言葉に言い換える
  • 自分の仕事に引き寄せる
  • 具体的な行動と結びつける

という「翻訳」が不可欠です。

⇒翻訳されないパーパスは、理解された“つもり”で終わります。

③ 評価と切り離されていないか

どれだけパーパスを語っても、

  • 評価されるのは数字だけ
  • 挑戦よりも失敗回避が優先される

この状態では、人はパーパス通りに動きません。

人は、「評価される行動」に最適化する からです。

パーパスを本気で使うなら、

  • どんな行動を称えるのか
  • 何を良しとするのか

ここまで踏み込む必要があります。

6. パーパスは「問い」として使う

成果を出している組織では、パーパスをスローガンとしてではなく、問いとして使っています

  • それは、私たちらしい選択か?
  • その判断は、長期的に価値を生むか?
  • その行動は、誇れるものか?

パーパスは、答えを与えるものではありません。

考え続けるための軸 です。

7. パーパスが“動き出す瞬間”

パーパスが機能し始めると、組織に小さな変化が起きます。

  • 会議の質が変わる
  • 判断スピードが上がる
  • 「それっぽい施策」が減る

そして何より、「なぜこの仕事をしているのか」が語られるようになる

この状態になると、DXは単なる業務改革ではなく、組織の進化プロセスになります。

8. おわりに

パーパスは、掲げるものではありません。使って、迷って、問い続けるもの です。

もしパーパスが現場で機能していないなら、それは「言葉が悪い」のではなく、使い方が設計されていない だけかもしれません。

次回は、「DX人材は“育成”できない ― 環境で育つ」 をテーマに、人材育成という言葉の裏側にある構造を掘り下げていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です